TAP DANCING

WALTZ CLOG - ARRANGED SIMPLIFIED AND ROUTINED

 1933年4月にJOHNNY MACK氏によって発行された縦17.8BX横12.8B、20ページの小冊子です。写真の掲載はなく、イラストも上の表紙だけです。アールデコ調のデザインがいかにも30年代らしい雰囲気をかもし出しています。この本、復刻版かと思うほど状態が良いのですが、どこにも復刻年月日が記されていないので、運良く60年もの間、引き出しの中にでも眠っていたとしか思えません。まえがきでMACK氏は「この本は、読めばプロになれるという、うたい文句の本ではなく、あくまでもアマチュアの方がタップとはどういうものか理解するためのキッカケになる為の本である」ことを説明しています。

 まず最初に"General Information"として靴の事が書いてあります。「両方のつま先にチップがついた軽くて柔軟性のある靴」を選ぶように指示しています。なぜかヒールにチップを付けるようにとは説明されていません。この頃はつま先だけにチップを付ける事もあったのでしょうか?ヒールは皮製か木製のがあり、多くの人は木製のヒールを好むと書かれています。

 その後に"Interest and Practice"という章では「興味をもって毎日練習するば、きっとすばらしい成果がでる」ということ。(そりゃそうでしょ)"Balance"では「初めダンスを習う時バランスで苦労するが、だんだんなれてくる、膝をゆるめること」。"Head" "Arms" "Fingers"では頭や手先の注意について。そして"Feet"の章では、「かかとを上げて練習することがポイント」であることを説いている。

 その後はこの本に出てくるステップの説明になる。 Tap, Shuffle, Hop, Spring, Jump, Triple, Stamp, Brush の8つだけである。その後にいよいよステップの解説に入っていく。

 ステップの表記の仕方ですが、まず使うステップの説明がされています。次の段では、aがステップの種類、bが右足か左足か、cがカウントで、これで振付がわかる仕組みになっています。この表記の仕方の欠点は、カウントがわかりにくい事です。2ー3と4ー5のあいだの「ー」(ハイフン)はこの二つのカウントを早く数える事を意味しています。タップ経験者なら、これがワルツステップだとわかるので、(1 2ー3 4ー5)というのは(1&2&3)というカウントなんだと検討がつきますが、たぶん初心者の方だったら、このカウントの取り方がわからないと思います。


 このような感じで First StepからSeventh Stepまであり、32小節のワルツの曲が3コーラス分踊れる振付が載っています。はっきりいって、初心者にはとても不親切な本である。運悪くこの本を最初に手にしたほとんどの人は「チェッ、タップなんて良くわかんねえや」と言って挫折したことでしょう。まったく罪な本です。

 あとがきの中にMACK氏が「私がボードビルで旅まわりをしている時に、この魅力的なアート(タップのこと)に感心を示す実にたくさんの人々に出会いました」という、1933年当時にタップダンスが流行しはじめていた様子がうかがえる言葉があります。彼はきっと旅興業をしながら、タップに興味を示してきた人々にこの本を売りつけて小金を稼いでいたのではなかろうか?もう一つ面白い箇所があって、「ちょっとステップができて、友人からスゴイと言われただけで、いきなりステージに上がって有名になれるなんて、まちがっても思ってはいけません!」と読者に忠告している。30年代は、そんな勘違い野郎が問題になる程タップダンスが活気づいていたのでしょう。

 この本の最後にJ.W パルフィーという人が書いた"Dancing"という詩のような文が載っています。僕の未熟な訳ですが、御紹介しておきます。

Dancing

それはただの足の動きではない

音楽のビートにのった しなやかなリズム

それはステップとスライドとターンの結合だけではない

(もちろんダンスにはその要素はあるのだが)

それはただの反応だけでもない

それは喜びであり、それ以上のものである

それはほんとうに愛すべき芸術だ

みんなの心に甘い幸福感をもたらす

その老にも若きにも訴えかける魅力は

完全には説明しきれない

それは喜びである ー ソフトで素晴らしく そして甘く

それなしでは 人生はつまらなく 完璧ではない

そして踊る人はきっとみんな同感のはず...

それはこのうえない喜びにもっとも近いものであることを

J.W.Palfy - Dancing Master  May.1928


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