ザ・タップ/宇川彩子

 タップの音をフューチャーしたレコードを作る発想は日本でもSPレコードの時代からありました。古くは林時男氏がコロンビアレコードから「バイバイブルース」でタップを吹き込んでるし、70年代に中野ブラザーズ両先生が東芝からリーダーアルバムを発売している。しかし営業的に大ヒットを飛ばすことがまずない「タップのレコード」は、世界的にみてもあまり多くはない。タップはやはり「見たい」のであって「聞く」という感覚が意外とないのである。そんなことにあえてチャレンジしたCDがコレである。宇川彩子!僕が彩ちゃん(と呼ばせて下さい)に初めて会ったのが加藤邦保先生のタップインでした。レッスンで彼女を見て「スゲ〜この子」って思ってました。その後加藤先生の公演で何度も共演させていただきました。そんな舞台でメキメキと実力をつけた彼女はやがてジャズのクラブなどで川村隆英氏たちとライブ活動を始めました。そしてソロライブをやるようになった頃、キングレコードの森川進氏の目に(耳かな)止まりCD発売につながったのですネ。制作段階から「DVDにしたら」とか「ビデオを出した方が」という意見はあったらしいのですが、あくまでも「音楽としてのタップ」にこだわったようです。2000年3月24日に発売されたこのCD!スタンダードな曲をゴキゲンなミュージシャンの演奏にのって宇川のリズムが躍動しています。正直言って最初聞いた時、タップの音が小さくて物足りなかったんです。僕が聞いたことのあるタップのレコードは、もっとタップの音が前面に出ているものがほとんどでした。だから「これミキシング悪いのかな?もっと宇川のステップがガンガン響いてこなくっちゃ!」と欲求不満になりました。でも冷静になってみれば、このCDのコンセプトは「タップは聴く音楽」なのである。タップもピアノやベースなどと同格扱いなのです。ミュージッシャンの一人なのです。そう思うと納得できました。たとえば普通のジャズのリスナーにタップの音が強い録音を聞かすと、タップの音が邪魔に思うかもしれない。でもミュージシャンと同等のレベルにすれば、打楽器として受け入れられる可能性があるわけです。いままでのタップのレコードは、タップが好きな人だけを対象にしていたと思う。でもこのCDはジャズのリスナーが鑑賞できるように制作されたのでしょう。(ちがうかな、森川さん?)だからCD時代になって初めて制作されたタップのCDということ以外に、日本で(世界でかな?)初めてタップダンサーをジャズの演奏者としてとらえたレコ−ディングなのだと思う。ちなみにこのCDではもうひとつおもしろい試みをしている。アカペラの作品がある。4人のタップダンサーのアンサンブルです。(彩ちゃんが僕にも声をかけてくれたので、このレコ−ディングに参加することができました。ありがとう!)ユニークなのは(バイノ−ラル録音)というやり方でして、人間の頭のかたちをしたダミーがありまして、そのダミーの耳にマイクが仕込んであります。それで録音すると人間が聴いてる状態と同じ方向から音が聞こえるようになります。僕たちはそのさらし首を四方に囲んで踊りました。Cジャムブルースのメロディ−をモチーフにしたアカペラ。ヘッドフォンで聴くとあなたの脳みその回りを宇川が踊りまくります。まっこれは余興として、本編の方ですが、一言でいって彼女のリズムは心地よいです。公演で共演させてもらった時、彼女の振付をやったことがありますが、ステップが素直なんですよ、以外と!身体に無理なことしてないんです。(僕じゃできないからやさしくしたのかもしれないけど)お母様がピアノを教えてたりする環境で育ってるので、たぶん音楽的にリズムをとらえているのだと思う。「ウォータ−メロンマン」のようなファンキーぽい曲からラテン調、4ビートの曲まで全部彼女流にこなしている。素敵なCDである。でもね、彼女の本領はやっぱりライブなんですよ!勢力的にライブ活動をしているので、ぜひ一度見に行ってみてください。そして帰りにこのCD買ってくのさ。

(ザ タップ/キングレコード KICJ 398)再2002年3月23日まで

宇川彩子のオフィシャルホームページ

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